– ボルボオーシャンレース 2017-18 Leg-4 第一幕(1/8)

海外レース情報
2018/01/08


年跨ぎの世界一周レース、「ボルボオーシャンレース 2017-2018」も2018年に突入しました。

Leg-4は、1月2日にメルボルンをスタート。香港を目指す約5600マイルです。
香港ストップオーバーは初。それもメルボルンから香港ですから、太平洋を北上し西へ戻るような形になります。

具体的には、
メルボルンスタート後、タスマン海の立ち入り禁止ゾーンを回ってからオーストラリア東岸を北上。
最初のマークは、ソロモン諸島の南東端、マキラ島の外れにある小さな島、Santa Ana Islandを左に見て交わし、ここから北西へ。

この原稿を書いている時点で、そのSanta Ana Islandを交わしたところです。

{2017-01-07-2012}

この後、Malaita Islandの北の小島、Dal Islandを左に見て、ソロモン諸島のゴチャゴチャした海域を交わします。

そしてここから、フィリピンのルソン島(Luzon)北端を交わして香港まで。ということはバブヤン海峡(Babuyan Channel)を通るということになりそうです。ここも小さな島が点在していて、なかなか難しそうです。

詳細は→こちら(Amendment 1 pdf)

Leg-3は距離も短く風も見込める帆走禁止ゾーン(AIEZ)の際一択で、強風下のジャイビング合戦という様相をみせましたが、Leg-4は無数の島や環礁を避けつつ、強く複雑な潮と赤道を挟んだ無風域と、とても難しいコースになりそうです。


と、ここにきて、乗艇メンバーが大幅に変わっています。

Leg-4のスタート時点で29点を挙げ総合トップの〈マフレ〉を除いて、全艇が乗艇メンバーを入れ替えています。

23点で同点2位につけている〈ベスタス〉は、なんとスキッパーのCharlie Enright(米:33歳)自身が艇を降りました。身内が入院したということで……って、それで降りるか? この大舞台。
代わりに、Enrightの盟友Mark Towill(米:29歳)がスキッパーを務めます。Enrightは香港から復帰するとのこと。

〈ベスタス〉と同点で2位につける〈ドンフォン〉は、ナビゲーターのPascal Bidegorry(仏:49歳)が怪我で艇を降ります。代わりに乗艇するのが、なんと前前回の覇者、Franck Cammas(仏:45歳)。大物です。本人も「スキッパー以外で乗るのは珍しいよね」と。

他にも、突然の怪我でLeg-3に乗らなかったDaryl Wislang(NZ:36歳)、Jeremie Beyou (仏:41歳)も復帰。
Daryl Wislangは若いですが経験豊富。Jeremie Beyouもバンデグローブで3位になるなど、その筋では大物。
さらに2人の女性セーラーも、五輪選手だったMarie Riou(仏:36歳)に代えて、外洋系のJustine Mettraux (スイス:31歳)に。スイス人ですが、フランスをベースにショートハンドの外洋レースで活躍している人です。

と、かなり補強、それもフランス色、外洋色がぐっと強まった感じ。
で、原稿を書いている時点ではトップに立っています。補強のかいがあったのか。

そんな〈ドンフォン〉を追い、〈アクゾノーベル〉が好調です。
Leg-1のスタート直前に、スキッパーのSimeon Tienpont(オランダ:35歳)自身がいきなりクビになったり復帰したりとドタバタで、ここまで9点、6位と振るわなかったのですが、Leg-2から乗艇している、Chris Nicholson(豪:48歳)、Jules Salter(英:48歳)はすっかり定着。Leg-3で降りていたPeter Van Niekerk(オランダ:45歳)、Luke Molloy(豪:37歳)もLeg-4で復帰。
女性クルーも、Emily Nagel(バーミューダ:22歳)からCecile Laguette(仏:31歳)に交代。この人、前回女性だけのチーム〈SCA〉に応募しトレーニングに加わるも最終選考で落ちて乗艇できなかったものの、いやだからこそ、やる気満々かな、と。
加えて、Leg-1から乗っているMartine Grael(ブラジル:26歳)もますます元気そう。この人、Torben Graelの娘でリオ五輪の49er級金メダル……はご存じですね。

Leg-4の第一幕は、オーストラリア東岸を流れる強く予測しにくい東オーストラリア海流をどう捉えるか。
東オーストラリア海流は、日本でいえば黒潮みたいなもの。赤道の南側を貿易風に沿って西進する潮流が、南太平洋西部で半時計回りに南下していくもので、シドニー沖あたりから渦をまくように不規則になるようです。
風は岸よりが良いようだが、海流を避けるには沖出しした方がいいのか。迷うところのようで。

〈アクゾノーベル〉のオンボード動画を見ると、スキッパーのSimeon Tienpont、ナビゲーターのJules Salter、そしてChris Nicholson……彼は単なるワッチキャプテンとは言い切れない程のキャリアがあり、と、3人で相談してもなかなか話がまとまらないもよう。これ、互いに自分の主張が強くてまとまらないというより、その逆で、3人ともなんか良い人みたいなんですね。動画をみていると。

スキッパーのSimeon Tienpontは、先のア杯では控えチームとして〈ソフトバンク・チームジャパン〉にいました。早福総監督とは、奥さん同士が仲良いらしい。
Leg-4で降りた女性クルーEmily Nagelも〈ソフトバンク〉のデザイン部門にいた人。と、〈アクゾノーベル〉は結構日本にとっては近い、応援したくなる存在なのですが。

と、3番手につけていた〈マフレ〉が追い上げてきて、東側から抜かれたもよう。
この原稿を書いている時点で、3番手です。
で、Leg-4の第2幕、珊瑚海に突入。

      ※

そして、Leg-2では思わぬセクハラ騒ぎに巻き込まれたかたちの〈スカリーワグ〉。詳細は→こちら

ここまで男7人+女1人という変則的な組み合わせだったのもその一因か。
というところで、Leg-4からは女性ナビゲーターLibby Greenhalgh(英:37歳)が乗艇しています。これで男7+女2の9人乗りとなり、今回のスタンダードキャスティングとなりました。
前回は〈SCA〉に乗っていたLibby Greenhalghは、気象学者でもあり、英国セーリングチームのコーチでもあり、と、かなりの大物。現在〈マフレ〉に乗っているRob Greenhalghの妹でもあります。

なんか、セクハラというより逆に、女性上位の感のある〈スカリーワグ〉です。

スキッパーDavid Witt(豪:46歳)は、「電子チャートと紙海図がちょっと違うんだよね。慎重に走ってます」と、コメントも慎重です。

公式webサイトは→こちら