インタビュー

Talk on Breeze : Vol.033 インタビュー

「2015 ISAF年次総会」に出席した植松副会長から、お話を伺いました。

日本セーリング連盟 副会長 植松眞
聞き手:高槻和宏
2015/12/16


高槻 — 2015年度のISAF(国際セーリング連盟)年次総会(2015/11/6~11/14:中華人民共和国、サンヤー開催)に行って来られたそうで。
そこにORC(Offshore Racing Congress)の会議も併催されているということですよね。

植松 — はい、セーリングに関する幅広い分野の会議を一気にやってしまうということで、毎年開催されているんですけど。外洋系からは、国際委員会の小林昇委員と鈴木一行委員。計測委員会の角晴彦委員、そして私の4名で出席し、対応する分野の会議に出席してきました。

—– 小林昇さんからの報告書が出ていますね。
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報告書の順番でいくと、まずはスペシャル・レギュレーション(OSR)ですか。これが来年(2016年)1月1日から改訂されて発効、と。

—– 現行は「2014-2015」版ですから、これが「2016-2017」版になるということですね。

詳しくは、外洋安全委員会の方から告知があると思います。

—– すでに「解説講習会」(2016/2/7:大阪開催)のお知らせなんかも出てますね。

後は、レーティングシステムの件ですね。外洋系としてのメインは。
で、ORCなんですよ。

—– ORCというと、これまで、IOR、IMSと国際的なレーティングシステムを作って管理してきた団体ですね。スペシャル・レギュレーションも最初はORCで作って、今はISAFが管理しているけど。あ、ISAFは「World Sailing」に名称変更したのか。

そう、IMSはその後ORC-I(ORC-International)となって、簡易版のORC-Clubがあって。小林さんの報告書にもあるけど、ヨーロッパでは結構増えてるんです。地域が偏ってはいるけどね。

—– 昨年の総会でも、ORCが増えてるってレポートありましたね。

なんかね、商売上手っていうか(笑)普及させるのうまいみたいなんですよね。

—– マーケティングは重要ですよね。
日本ではIRCが主流ですけど。

日本では、IRCは日本セーリング連盟内にIRC委員会があって、日本国内のIRCルールの維持管理しているんですけど。
ORCの方は日本ORC協会(ORCAN:ORC Association Nippon)が外部の組織としてセーリング連盟との業務委託という形になっているんです。

—– えー、でも、ORCの会議には、植松さんと小林さんが日本の代表として出てるんでしょ。昨年もそうでしたよね。

そう。日本ORC協会も1議席持っているはずなんだけど、ここ数年は日本ORC協会からの出席がないもんで。ORCの名簿でも、私と小林さんが日本のコングレス・メンバーになってるんです。
となると、やっぱりIRC委員会はあるけどORCだけ業務委託というのも適切な状態じゃないということで。いろいろあってこれまでは業務委託という形になってたんだけど、セーリング連盟としては日本ORC協会との契約更新はしないということになりまして。2016年1月1日からORC委員会を作って業務を受け継ぐことになっています。

—– ああ、それ、日本ORC協会からの発表を「Log on Breeze」に掲載してます。
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とはいえ、日本ORC協会で業務にあたっていた人達にも協力していただかないとならないので、その辺り、外洋計測委員会の吉田豊委員長が中心となって準備中です。そちらからの報告をお待ち下さい。

—– 報告書では、ユニバーサル・メジャメントシステム(UMS)という話も出てきてるんですよね。昨年の報告書にもあったと思いますが。

これは、いくつかのレーティングシステムで計測データを統一できないか、という話みたいなんだけど、まあ、ちょっと先の話ですかね。
日本ではIRCかORCかって話で、IRCが主流になっているんだけど、小林さんのレポートにもあるように、国内でもIRCとORCで両方成績出す、みたいなイベントも結構やったんですよ。
世界ではIRC取得艇は減っていて、ORC取得艇は増えている、との報告も出ているわけで。

—– そもそも、ハンディキャップ係数の算出基準がブラックボックスになっているIRCは選手権には合わない気もしますしね。そんな中、ORC-Iもだいぶこなれてきてるってことですね。

そうそう。公平という意味ではVPP(注1)を使うORCの方が公平に感じます。
IMS時代はいろいろ問題もあったと思うけど、近年改善されて、ORCも非常に良いレーティングになっていると思いますよ。
そして、今後はIRCもORCも両方ともナショナルオーソリティーであるセーリング連盟で管理する、と、そういうことです。

—– かしこまりました。
こちらも久しぶりにORCについて研究しておきます。

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(注1)VPP=速度予測プログラム。計測によって確定したデータを元にコンピュータが性能解析をおこなう。IRCはその部分がブラックボックスになっており、経験則に基づく判断、つまり恣意的な部分がある。対して、科学的論理性による方が公平、という意味。