-「第37回 ア杯」NZ防衛 その先は……

「THE LOUIS VUITTON 37TH AMERICA’S CUP BARCALONA」(第37回 アメリカズカップ)は、〈Emirates Team New Zealand〉が7勝2敗で挑戦艇〈INEOS Britannia〉を下し軽々と防衛達成しました。

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勝負は7戦先取で決着です。
初日の10/12(土)に2レース。10/13(日)、10/14(月)に1レースづつ。と、ここまで防衛艇〈Emirates Team New Zealand〉が4連勝。圧勝という感じ。

伝統的な風向に直角なスタートラインに短いカミシモのソーセージコース。左右のコース境界(バウンドリー)で閉じられた狭いレースコースで、1レースは約30分で終了。
爆速艇ゆえタッキングでのスピードロスが大きいこともあり、勝負は淡々と進んでいきます。

10/15(火)のレイデイを挟んで迎えた10/16(水)の第5レースは、軽風下のプレスタートで〈Emirates Team New Zealand〉がジャイブに失敗してタッチダウン(フォイリングできていない状態)になってそこからなかなか走り出せず、スタートから大きく遅れます。常にフォイリングを維持し続け走り切った〈INEOS Britannia〉が初勝利を挙げます。

続く第6レース。
プレスタートでは〈Emirates Team New Zealand〉が〈INEOS Britannia〉をコントロールしていたように見えたのですが、スタートラインを越える時点では〈INEOS Britannia〉の方が艇速がありリードして1上マーク回航。その後もリードを保ってこの日2連勝。

おお、これは〈INEOS Britannia〉が盛り返して面白くなるのか……と思わせた一日でしたが。その後、10/17(木)のレイデイを挟んで10/18(金)は〈Emirates Team New Zealand〉が2連勝して王手をかけ。続く10/19(土)もアッサリ勝利し7勝2敗で防衛成功となりました。

10/16(水)の第5レースも〈Emirates Team New Zealand〉のオウンゴールみたいなものなので、これはもうニュージーランドの圧勝といってもよろしいかと。この後何十レースやっても勝負がひっくり返ることはないんじゃないかと思える力の差を感じました。

ニュージーランドとしては、1995年のサンディエゴでカップを奪取し、2000年のオークランドで初防衛。
2003年の防衛戦ではスイスにカップを奪われますが、このときのスイスチームはスイスのヨット好きな大富豪がスポンサーについたチーム・ニュージーランドみたいなものだったわけで。
いやそれはそれで大きなニュースになりましたが。

この後カップは米国に戻りますが、
2017年にはバミューダで〈Oracle Team USA〉からカップを奪い返したニュージーランド。続く2021年の防衛戦はオークランドで開催され、これもあっさり防衛。
そして今回の2024年、第37回大会の勝利でニュージーランドとしては3度目の防衛成功ということになりますか。
強いです。

でもなんだか、レース自体は妙味にかけると申しましょうか。
なぜか?
ナンの関係もないスペインのバルセロナで開催されているからか。これが〈INEOS Britannia〉が勝ったなら、「カップはXX年ぶりに英国に戻り……」なんてワクワクするニュースになるんだろうけど。次の開催地はお金次第で決まるってことでは、なんだかカップの重みが薄れる感じで。通例ではこの時点で次の挑戦艇が名乗り出ていたりしてたと思いますが、そのてのニュースは聞こえてきてませんし。

レース自体も、空気抵抗を抑える為に乗員はデッキから頭が出ているだけで、人間が動いているところがほとんど見えない。となると、フォイルが上下する動きもやたら機械的にしか見えないし。やっぱりデッキ上でクルーが動き回り、上マークを回ったらスピネーカーが展開される。下マークではダイナミックな取り込み作業でそこに後続艇も絡んできて、みたいな映像が欲しいですよね。

艇速はあるのでスリリングではあるのですが。“それじゃない感”が浮かぶのは筆者だけでしょうか。

セーリングニュースのサイト「SCUTTLEBUTT」に掲載されている「Lessons from the 37th America’s Cup(2024/10/21)」という記事では、
»Click
と、肯定的にとらえている部分もありますが。このままでは……と感じた人は少なくないのでは?

今の「アメリカズカップ」はスポンサーが前面に出てくるプロが演じるエンターテイメント、魅せるイベントになっており、その割にはドラマ性が少なく。
と、アメリカズカップそのものが曲がり角かも。いや、曲がり角を曲がりきっているところなのか?


「アメリカズカップ」はどう考えても外洋系とはいえないので、「onBreeze」で扱わなくても……という声もあろうかと思いまして。最後の記念ということで、11月の表紙写真は「ア杯」でいくことにしました。

というところで、今週末の11/10(日)には本物の外洋レース「Vendée Globe」がスタートします。
大会webサイトは→こちら
白石康次郎の〈DMG MORI Global One〉も出ますぞ。
レース公示は→こちら(pdf)
帆走指示書は→こちら(pdf)

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