海外レース情報
2023/06/20
– いったいどうなってしまうのか?
1月からずっとお伝えしてきたフルクルー・ステージ制世界一周レース「The Ocean Race」は、いよいよ最後の第7レグとなりました。
6月15日(水)、ハーグ(オランダ)をスタートしジェノバ(イタリア)までの約2,200マイル。
いつものようにスタート後まずはブイを2周してからリービング・ゲートを越えて外洋に出て行くわけですが、なんとスタートから僅か15分後のマーク回航時、レイラインに乗った〈11th Hour Racing Team〉にポートタックの〈GUYOT environnement – Team Europe〉が突っ込んできて衝突。
〈GUYOT〉で舵を持っていたBenjamin Dutreuxは「全く見えてなかった。見えたときは手遅れだった」と言ってますが、たった5艇でレースやっていて、いくら視界の悪いIMOCA60とはいっても、他の4艇がどことどこにいるのかくらい把握しとけよと思いますが。
〈11th Hour Racing〉としては「あ、あいつこっち見えてない」と悟った瞬間避けてはいるんですが……。動画ではピー音の連続で……。
総合トップの座をほぼ手中に収めていたといってもいい〈11th Hour Racing Team〉としてはもう愕然というか放心というか。いったいどうなってしまうのか?!
〈GUYOT〉は100%非を認め、ハーバーに戻ってすぐに〈11th Hour Racing Team〉に謝りにかけつけています。っていっても謝って済むような問題じゃないところにもってきて〈11th Hour Racing〉側では最初に出てきたteam CEOのMark Twillが「怪我はなかったか?」などと大人の対応で。これBenjamin Dutreuxとしては逆にキツイですよね。もうなんか泣いてるもんなぁ。いっそ、「てめー、どこ見て走ってんだ。どーしてくれんだよ」といって殴りかかってこられた方が楽かも。
Benjamin Dutreuxというのは、「バンデグローブ2020」では無名の新人だったわけで。
こちら、バンデグローブのときの紹介記事です。
「バンデ」時点で30歳ですから、今は33歳か。このレースでスキッパーを張るのはちと酷だったのかも。五輪選手であるRobert Stanjekがいるんだから、ねぇ。
〈GUYOT〉はすぐにリタイアしたと記事に出ていますが、上の動画の中(10:40位)でMark Twillが「ブラック・フラッグ揚がったんだろ?」と確認してます。このレースはリービング・ゲートを出るまではオンザウオーター・ジャッジが適用されており、海上で失格(DSQ)と判定されたということ。じゃないと〈11th Hour Racing〉側では抗議する必要が出てきちゃうんでしょう。アタフタしてて抗議旗揚げてなかったみたいだし。別の動画ではスキッパーのCharlie Enrightも同様にブラックフラッグを気にしてます。
で、改めて確認ということでしょう。レーストラッカーの画面では「RET」となってるし。
第7レグスタート時点での順位表がこちら。
boat | leg | total |
---|---|---|
〈11th Hour Racing Team〉 | 4-3-3-3-5-10-5 | 33 |
〈Holcim – PRB〉 | 5-5-5-4-0-08-4 | 31 |
〈Team Malizia〉 | 3-2-4-5-4-06-3 | 27 | 〈Biotherm Racing〉 | 2-4-2-2-3-04-2 | 19 |
〈GUYOT environnement – Team Europe〉 | 1-1-0-0-0-00-1 | 02 |
(第3レグは中間ポイントがあるので2つに分けて書いてます。〈GUYOT environnement – Team Europe〉はセールの搭載枚数上限を超えていたことが発覚し-1点のペナルティーが課せられてのこの得点になります)
〈11th Hour Racing Team〉としては、なんとか艇を修理してレースに復帰すれば最下位の4位で入って2点獲得。33+2で合計35点。ちなみに、タイムリミットはありません。
〈Holcim – PRB〉はこの第7レグでトップをとれば、31+5の36点で総合優勝。ですが2位だと31+4=35点で〈11th Hour Racing Team〉と同点。同点だとインポートレースではここまで合計24点の〈11th Hour Racing Team〉に対して〈Holcim – PRB〉は15点ですから、ジェノバでの最後のインポートレース(7/1開催)で逆転はできず。ということは〈11th Hour Racing Team〉の総合優勝になると思うのですが。
この記事を書いている時点では〈11th Hour Racing Team〉も第7レグは正式にリタイアし、ジュリーへの救済要求を出しその結果にすべてを預けているようです。
仮にこれまでの平均点が加えられるとすると、4.125になりますか。
となると、〈Holcim – PRB〉は第7レグでトップをとってもひっくりかえぜず。
となると、第7レグが終わる前にその判定を出しちゃうと、〈Holcim – PRB〉はどんなに頑張っても総合優勝できないことが決まってしまうことでもあり。かといって、第7レース終了後に逆転優勝が決まる判定を出すのもどうよ、とも思うし。
難しぃー。
上の動画(6/16)時点では、「判定は再来週になる」と言ってます。
などとつらつら考えると、Benjamin Dutreuxはこのインシデントで〈11th Hour Racing Team〉のみならず、「The Ocean Race 2022-2023」そのものを台無しにしてしまった、ともいえ。
ただでさえたった5艇の出場でトホホな状態をなんとか盛り上げてここまできたわけで。へたすると次の開催は無い……となると、1973年から続くフルクルー・ステージ制世界一周レースそのものを台無しにしてしまうことにもなりかねず。
Benjamin Dutreuxとしてはけして無謀に攻めていって大失敗ということではなく、単なる未熟さと不注意がゆえと思われ。いやー本人辛いだろうなと、ちょっと彼に同情してしまいます。
〈11th Hour Racing Team〉は修理を終え、ジェノバまで回航して行くことに。
世界一周としは完結させ、第7レグをリタイアしただけで大会への出場は続行。7月1日の最後のインポートレースには出る、と。
11th Hour Racing Team leaves The Hague for Genova
〈11th Hour Racing Team〉は第7レグはリタイアで0点でも合計33点。
一方、〈Team Malizia〉は第7レグトップフィニッシュしても、27+5=32点でまだ届きません。
で、これがまた、風が無くてヘロヘロの展開でして。
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おまけ映像
第6レグでも貧差で負けているのに、とにかく明るい〈マリシア〉チーム。安心してください。帆走ってますよ。