-「The OCEAN RACE」グランド・フィナーレ

海外レース情報
2023/07/04

– 〈11TH HOUR RACING〉優勝

このコーナーでずっとお伝えしてきたフルクルー・ステージ制世界一周レース「The Ocean Race」は最後の第7レグが終了し、〈11th Hour Racing Team〉が優勝と決定し幕を閉じました。

これがなかなか複雑でして……。

振り返れば、
1月15日。たった5艇のフォイリングIMOCA60のエントリーで始まったこの「The Ocean Race 2022-2023」。
こちら「海外レース情報」としては、「GLOBE40」の記事のオマケ的な扱いでスタートを報じていますが……。

-「GLOBE40」第6レグスタート

アリカンテ(スペイン)をスタートし、ミンデロ(カボ・ベルデ)、ケープタウン(南アフリカ)と大西洋を南下。南氷洋を一気に走り切る第3レグを終えるまでずっと首位に立っていた〈Holcim – PRB〉ですが、なぜかスキッパー以外のメンバー全員を刷新して挑んだ第4レグ(大西洋北上)でディスマストしリタイア。
それでもここまでの貯金で首位の座をキープしています。

その第4レグと続くポイント2倍の大西洋横断の第5レグで2連勝した〈11th Hour Racing Team〉がここで逆転し首位に立ちます。

といってもまだ1点差。となると続く第6レグが勝負の大一番……のはずなのですが、追う〈Holcim – PRB〉はなぜかスキッパーを含む4人が入れ替わり、この大事な第6レグも落とし、2点差で突き放されます。

-「The OCEAN RACE」第6レグ 終了

たった2点差……とはいえ、なんといっても5艇しか出ていないので、2点差をひっくり返すのはなかなか大変です。タイを解くインポートレースの成績では〈11th Hour Racing Team〉が圧倒的にリードしており、となると同点じゃだめ。3点差を付けてひっくりかえさなければならないわけで……。

と、総合優勝に王手をかけたといっていい〈11th Hour Racing Team〉ですが、最終第7レグのスタートで、ここまで総合で圧倒的な最下位にいる〈GUYOT environnement – Team Europe〉と衝突しリタイアします。
ポート/スターボのケースで「見ていなかった」というポート艇〈GUYOT environnement – Team Europe〉側では100%非を認めるものの、〈11th Hour Racing Team〉側の救済要求はどこまで通るのか。

……という状況で、たった3艇がジェノバ(イタリア)へ向かう最終第7レグですが、これがまた風が弱く。主催者側としては6月25日の日曜日に大盛り上がりの中でグランド・フィナーレを迎えるというシナリオを描いていたんでしょうが、フィニッシュは遅れ、6月27日に。
で、これが、12日間ほぼトップをキープしていた〈Holcim – PRB〉が、最後の最後、残り40マイル付近で一気に逆転され、なんと最下位の3位になるという劇的な展開……なのですが。逆転しトップフィニッシュした〈Team Malizia〉はそれでも合計32点で、このレグリタイアで0点の〈11th Hour Racing Team〉にも届かず。
一方、グランド・フィナーレで大逆転負けを喫した〈Holcim – PRB〉……とはいえ、総合では34点で首位を死守。
……なんだけど、この後6月29日のヒヤリングで〈11th Hour Racing Team〉の救済が通れば優勝は……?
さらにいえば、この時点で最後のインポートレースに出場するべく回航中の〈11th Hour Racing Team〉。どうせ走って来るならサスペンド解除してレースとして走れば、第7レグ4位の2点追加で合計35点。結果的には堂々の総合優勝だったわけで……。

と、誰が喜んでいいのかガックリしていいのか。誰を称えればいいのか。
良く解らない状況の中で6月29日、救済要求のヒヤリングが行われ、結果は、
〈11th Hour Racing Team〉が第6レグまでに取った平均点として最終第7レグを4点とする。
というもの。
つまり救済要求が通って(大方の予想通り)〈11th Hour Racing Team〉の総合優勝が決まります。

この時点では〈11th Hour Racing Team〉はまだ回航途中で。つまりヒヤリングにはチームのCEOであるMark Twillが出席。で、決定に大喜びの陸上スタッフなのですが、同時にネットで決定を知る〈11th Hour Racing Team〉の艇上では無言で歓喜を内に秘めた複雑な表情でいるところが興味深いです。
普通にフィニッシュして優勝していたら、どんなに盛り上がったことか……。

総合成績はこちら

boat leg total
〈11th Hour Racing Team〉 4-3-3-3-5-10-5-4 37
〈Holcim – PRB〉 5-5-5-4-0-08-4-3 34
〈Team Malizia〉 3-2-4-5-4-06-3-5 32
〈Biotherm Racing〉 2-4-2-2-3-04-2-4 23
〈GUYOT environnement – Team Europe〉 1-1-0-0-0-00-1-0 02

(第3レグは中間ポイントがあるので2つに分けて書いてます。〈GUYOT environnement – Team Europe〉はセールの搭載枚数上限を超えていたことが発覚し-1点のペナルティーが課せられてのこの得点になります)


と、総合成績が発表された“後”で〈11th Hour Racing Team〉がジェノバに到着。

7月1日には予定通り最後のインポートレースが行われました。

風弱く、最後はコース短縮で終わりましたが、ここでも〈11th Hour Racing Team〉が逆転トップフィニッシュ。
シリーズトータルはインポートレースも〈11th Hour Racing Team〉が優勝。
公式スコアボードは→こちら

と、今回の「The Ocean Race 2022-2023」は、なんだかもうトホホな展開で、盛り上げる記事を書くのが難しいです。
が、改めてこちら「海外レース情報」ページを見返してみると、やっぱり面白かったなぁ、と。主催者側の広報はかなり頑張っていたと思います。

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